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第67回 卵巣腫瘍の分類について



卵巣腫瘍の分類について

今回は分類が非常に複雑である卵巣腫瘍に関して、それぞれの概要を纏めました。

?@卵巣腫瘍の分類
卵巣腫瘍は大別して以下の3つのカテゴリーに分類されています。

a)上皮性腫瘍;表面上皮やイヌに固有の構造とされるsubsurface epithelial structures(SES)に由来する腫瘍

b)性索間質性腫瘍;顆粒膜や莢膜などの性索間質に由来する腫瘍

c)胚細胞腫瘍;胚細胞(卵細胞)に由来する腫瘍

上記の3つのカテゴリーのそれぞれに複数の腫瘍が含まれています。
新WHO分類による卵巣腫瘍の分類は以下のようになります。(※1)

a)上皮性腫瘍
 ・乳頭状腺腫(Papillary adenoma)、乳頭状嚢胞腺腫(Papillary cystadenoma)
 ・乳頭状腺癌(Papillary adenocarcinoma)
 ・Rete adenoma

b)性索間質性腫瘍
 ・顆粒膜細胞腫〔顆粒膜-莢膜細胞腫〕(Granulosa cell tumor〔Granulosa-theca cell tumor〕)
 ・莢膜細胞腫(Thecoma,Theca cell tumor)
 ・間質細胞腫瘍(Interstitial cell tumor)

c)胚細胞腫瘍
 ・未分化胚細胞腫(Dysgerminoma)
 ・奇形腫(Teratoma)
 ・胎児性癌(Embryonal carcinoma)

これらの腫瘍はしばしばHE標本上での鑑別が困難であったり、また複数の細胞由来が疑われる腫瘍が存在します。
例としてヒトでの分類で性腺芽腫(Gonadoblastoma)という腫瘍がありますが、これは胚細胞-性索間質性混合腫瘍にカテゴライズされる腫瘍であり、性索間質と胚細胞の両細胞成分からなる腫瘍です。
これは動物では分類されていない腫瘍ですが、疑わせるような組織像(証明は困難ですが)の腫瘍を弊社では少数ですが経験しています。
そのため卵巣腫瘍においては、しばしば複数の腫瘍を包括した診断名を付けることもあります。

また、新WHO分類には上記の3つのカテゴリーの他に間葉系腫瘍として、血管腫、平滑筋腫も卵巣原発の腫瘍として分類されています。


?A卵巣腫瘍の各論
上記のそれぞれの腫瘍についての概論は以下のようになります。

a)上皮性腫瘍

・乳頭状腺腫、乳頭状嚢胞腺腫
 イヌの卵巣腫瘍で比較的よく見られる良性腫瘍。

・乳頭状腺癌
 イヌの卵巣腫瘍で比較的良く見られる悪性腫瘍。しばしば腺腫との鑑別が困難だが、サイズや核分裂像、浸潤性などに基づいて判断する。リンパ節、肝臓、肺などへの転移が報告されている。

・Rete adenoma
 卵巣網由来の腺腫であり、イヌにのみ報告がある。発生はごく稀とされている。

報告では、上皮性腫瘍はイヌの卵巣腫瘍の40〜50%を占めるとされています。
弊社の過去5年間での卵巣腫瘍の診断件数は836件であり、その内上皮性腫瘍は以下の通りです。
腺腫(乳頭状・嚢胞状いずれも含む)・・・391件
腺癌(悪性度に関わらず)・・・131件
卵巣腫瘍全体における上皮性腫瘍の割合は約62%となっています。

b)性索間質性腫瘍

・顆粒膜細胞腫
 顆粒膜細胞に由来する腫瘍。性索間質性腫瘍の中で最も発生頻度が高い。しばしば莢膜細胞成分も含むことがあり顆粒膜-莢膜細胞腫とも呼ばれる。またオスのセルトリー細胞腫に類似した形態を呈するタイプもあり、その場合文献によってはSertori cell tumor of the ovaryとして表記されている。約20%が悪性の挙動を取り、リンパ節、肝臓、肺などへ転移するとされている。

・莢膜細胞腫
 莢膜細胞に由来する腫瘍。一般的に良性に分類される。

・間質細胞腫瘍
 上記2つとは形態の異なる性索間質性腫瘍。新WHO分類では黄体腫(Luteoma)、ステロイド細胞腫瘍(Steroid cell tumor)、Lipid cell tumorという呼称の腫瘍がこれに含まれる。またオスの間細胞腫に類似するものは文献によってLeydig cell tumor of the ovaryとして表記されている。これらは良性腫瘍と考えられている。

性索間質性腫瘍に属する腫瘍はステロイドホルモン産生能を有することが稀ではないとされています(性索間質性腫瘍全体として約50%以下)。
性索間質性腫瘍はイヌの卵巣腫瘍の35〜50%を占めるとされています。
弊社での過去5年間の診断件数は以下の通りです。
顆粒膜細胞腫・・・245件
莢膜細胞腫・・・4件
間質細胞腫瘍・・・5件
性索間質性腫瘍(分類困難)・・・11件
卵巣腫瘍全体における割合は約32%となっています。

c)胚細胞腫瘍

・未分化胚細胞腫
 原始胚細胞に由来する腫瘍であり、オスのセミノーマに相当する腫瘍。悪性に分類され、いくつかの報告により10〜30%の転移率と見られている(転移率の幅が広いが、組織形態学的に臨床的挙動の判断(悪性度の評価)をすることは困難あるいは不可能とされている)。最もよく転移するのはリンパ節であり、その他には肝臓、腎臓などにも転移の報告がある。

・奇形腫
 原始胚細胞に由来する腫瘍であり、外胚葉・中胚葉・内胚葉のいずれにも分化を示す。ヒトの分類では分化の程度により成熟奇形腫と未熟奇形腫に分けられている。前者は良性、後者は悪性とされているが、遠隔転移を起こすことは稀で、どこまでが悪性であるか必ずしも明確にされていないことも多い。動物の新WHO分類では奇形腫の細分類はされていないが、文献により悪性奇形腫(Malignant teratomas)や奇形癌(Teratocarcinomas)といった表記があり、転移の報告が為されている。

胚細胞腫瘍のうち、胎児性癌に関しては記載している文献が少なく内容も乏しいため割愛させていただきます。
胚細胞腫瘍はイヌの卵巣腫瘍の6〜12%を占めるとされています。
弊社での過去5年間の診断件数は以下の通りです。
未分化胚細胞腫・・・39件
奇形腫・・・6件
胎児性癌・・・0件
卵巣腫瘍全体における割合は約5%となっています。

以上の腫瘍の他、弊社では胚細胞-性索間質性混合腫瘍と判断した卵巣腫瘍が過去5年間に4件ありました。

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