パソラボ イヌ ネコ 小動物 病理検査
パソラボ イヌ ネコ 小動物 病理検査
ホーム
サイトマップ
PATHOLABO
サービス紹介診断医プロフィール会社案内館内案内求人案内資料請求/容器注文登録情報設定
パソラボ情報
パソラボ イヌ ネコ 小動物 病理検査
トピックス一覧に戻る

第50回 ネコのワクチン関連肉腫



今回はネコのワクチン関連肉腫に関するお話です。


1. ワクチン接種後に腫瘍が発生するまでの期間は4週間から10年と報告されています。

2. ワクチン接種して4ヶ月後までに、炎症が消退しない場合は、炎症に続発して肉腫が発生する危険性が増大する。
 (他の報告ではワクチン接種部位の腫瘤が、接種後3ヶ月以上存在している場合、直径で>2 cm の場合、接種後4週間以上サイズが増大し続けている場合には腫瘤の治療を推奨しています)

3 ワクチン関連肉腫を発現するネコの平均年齢は約10歳(報告によっては8歳)、発生のピークは6-7歳と10-11歳。また雌猫で発生率が高いとする報告もあり。品種好発性はない。

4 発生部位としては頚部背側、肩甲間、胸背部側面、後肢、腰部背側のような、一般的な注射部位に認められる。しかしながらより腹側にも典型的なワクチン関連肉腫が発生することがある。
  これはワクチン接種部からワクチンが沈降性に流動していくためと考えられている。

5. ワクチン誘発性肉腫の発生頻度は狂犬病あるいはFeLVのワクチン接種10,000 頭あたり、およそ1、2頭(1,000頭に1頭という報告もあり)。

6. 肉腫の発生と分化には様々なサイトカイン(TGF-βやGM-CSF、PDGF、EGF等)が関与。

7. ワクチン誘発性肉腫は線維芽細胞や筋線維芽細胞、筋芽細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞を等起源とし、時に組織球からも発生する。
  (従って、線維肉腫、粘液肉腫、筋線維芽細胞線維肉腫、横紋筋肉腫、悪性線維性組織球種、骨肉腫、軟骨肉腫、組織球肉腫は、すべてワクチン接種を背景に発生するコトがある)

8. 発生した腫瘍内に二種類以上の肉腫が混在することがある。

9. アジュバントワクチンはワクチン部位の反応、あるいは軟部組織肉腫を発生させる傾向が強いと言われていたがが、2つの大規模疫学研究では、アルミニウム含有ワクチンがより高い危険性をもたらすという証拠はなかった
  (それゆえに、非アジュバントワクチンがより安全かどうかは、はっきりしていない)。

10. FeLVおよびネコ肉腫ウイルスは、ネコのワクチン関連肉腫の発病機序に関与しないと考えられている(免疫染色やPCRで、これらのウイルスは検出されていない)。

11 ワクチン関連肉腫の組織像は、非ワクチン関連肉腫と比較して、核および細胞の著しい多形性、より多くの腫瘍性巨細胞の存在、腫瘍壊死の増加と好中球浸潤、高有糸核分裂像、
   リンパ球およびマクロファージからなる炎症細胞浸潤の存在などが認められ、より侵襲性に増殖する。

12 積極的に外科マージンを取っても、完全切除が得られるのはネコの50%以下(そのうえ、1年および2年の無病率は35%と9%と低い)。

13. 全米獣医学会のネコワクチン関連肉腫対策委員会(VAFSTF)は、腫瘍の側方および深部ともに最低2 cm のマージンの外科的切除を推奨している。
  (2cm のマージンでは不足であるという外科医もおり、彼等は肩甲間、体幹、四肢を含む様々な部位において、5 cm の側方マージンと、筋膜2枚の深部マージンを確保することで、組織学的完全切除は97%、
局所再発は11%のネコでしか認められなかったとしている)

14. 術前放射線治療後の完全切除では、腫瘍再発までの期間は延長するが、局所再発率を制御しないと考えられた。また術後放射線療法の結果も術前放射線療法と類似しているようです(ちなみに、
外科的切除から放射線療法までの期間が延長するに伴い、無腫瘍期間および生存期間が短縮するため、放射線療法は術後10-14日から開始すべきとされています)。

15. 腫瘍の局所再発は生存期間には影響を与えず、また外科切除に関連した放射線療法のタイミングに関わらず生存データは有望であり、生存中央期間は600-842日、1年、2年、3年生存率はそれぞれ86%、44%、28%である。

16. 化学療法の役割も不明確とされています。

17. ワクチン関連肉腫のネコの12-26%に転移が報告されており、転移までの中央期間は265日であった。

18. 議論の余地はあるものの、予防としては
i) ワクチン接種部位を変えること、
ii) 多価ワクチンの使用を減らすこと、
iii) 非アジュバントワクチンを使用すること、
iv) アルミニウム系アジュバントの使用を避けること、
   v) ワクチン接種の間隔を延ばすことなどが挙げられています。

19. また上述のVAFSTF によると、
I) 肩甲間にはいかなるワクチンも接種しないこと、
ii) 狂犬病ワクチンは右後肢の遠位に接種すること、
iii) FeLV ワクチンは左後肢の遠位に接種すること、

パソラボ





記事をPDFでダウンロード
Copyright(c)2006-2010 Patho Labo Co.,Ltd All Rights Reserved.