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第24回 ネコの肛門嚢腺癌64例



肛門嚢腺癌は肛門嚢のアポクリン腺組織に由来する悪性度の高い腫瘍です。イヌではよく知られていますが、ネコでの発生は稀で、報告もほとんどありません。この報告はイギリスの研究で、13年間に検査されたネコの肛門嚢腺癌64例について書かれています。

Anal sac galand carcinoma in 64 cats in the United Kingdom (1995-2007)
A. M. Shoieb and D. M. Hanshaw
Vet Pathol 46:677-683(2009)


<症例64頭>
年齢;6-17歳(平均12歳)
性別;メス39頭(避妊メス34)、オス25頭(去勢オス23)    ♀♂比1.56
品種;D.S.H.42頭、シャム5頭、D.L.H3頭、バーミーズ2頭、ペルシャ、バーマン各1頭
腫瘍は片側性であり、大きさは1-2cmのものが多く見られた(0.5-5cm)

肛門嚢腺癌はイヌでは高齢のメスに好発するとされていましたが、最近では性差はほとんどないとの報告もあります。この研究では、64頭のうち39頭(61%)がメスであり、メスに好発傾向が見られましたが、ほとんどのネコが中性化されていたため、ホルモンの影響は少なくなっていると考えられます。

臨床症状として排便困難や便秘、便の量や性状の変化、肛門周囲の腫脹などが見られました。イヌの肛門嚢腺癌は皮膚から比較的深い部位に形成され、深部に向かって増殖する傾向があり、自潰が見られることは稀です。しかし、このネコの研究では18例(28%)で潰瘍や出血、排膿、ろう管が形成される症例が見られました。何例かは当初、肛門嚢炎や肛門嚢膿瘍として治療されており、通常の治療(抗生物質など)に反応が乏しいため組織検査が実施されていました。イヌでは肛門嚢の感染や膿瘍形成に続いて肛門嚢の閉塞が起こることが比較的一般的と考えられますが、ネコでは肛門嚢の疾患自体が少なく、肛門嚢の閉塞は一般的に感染を伴わずに起こります。そのため、高齢で肛門嚢疾患の兆候を示すネコの場合には鑑別診断に肛門嚢腺癌を含めるべきであると言えます。

イヌの肛門嚢腺癌では頻繁に高Ca血症が見られます。この研究では血清Ca値を測定した症例は5頭のみであり、そのうち1頭がわずかに高値を示した他は正常値でした。

検査後の経過が追跡可能だった39例のうち、33例(84.6%)が安楽死もしくは腫瘍の直接的な影響で死亡しています。中央生存期間は3ヶ月(0-23カ月)、1年生存率は19%、2年生存率は0%でした。
5例は周術期合併症のため、2例は検査結果報告後に飼主の希望で安楽死されています。腫瘍の進行(6例)および再発(16例)のため安楽死された症例では、主な原因は局所の浸潤性増殖と排便障害でした。再発までの期間は1-16ヶ月でした。

イヌと同様、ネコの肛門嚢腺癌も周囲組織へ浸潤性に増殖する腫瘍であり、線維組織や周囲の筋組織、直腸壁への浸潤が見られました。
組織学的に腰下リンパ節への転移が確認されたのは1例であり、6例では肝臓、肺、腹腔内リンパ節、横隔膜への転移が疑われました(剖検は実施されていません)。また7例で組織学的にリンパ管内浸潤が確認されました。
イヌの肛門嚢腺癌では多くが臨床症状を示した時点で既に転移が認められ、所属リンパ節への転移が最も多いと報告されています。

この結果から、ネコの肛門嚢腺癌は局所浸潤性に増殖し、(イヌと比較すると)転移の傾向が低いことが推測されます。

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